冷淡なる薔薇の王子と甘美な誘惑
「そうか?」

 首をかしげる見目麗しい顔に当てられ、頬がかっと熱を持つ。
 熱くなった頬をそろりと指の背で撫でられると、喉の奥から心臓が飛び出してきそうに弾けた。

「わっ、わわわわたくしは……っ、そのっ、男の方を、好きだとかそういうことは、まだ……」

 激しい鼓動に喉が詰まり、上手く言葉を出せない私を、グレイスはやんわりと目を細めて見つめる。

「なっ、なので、お二人の想い合うお姿がとても素敵だと思いまして、それで……」
「お前がそんな風に言ってくれると、いずれは諦めなければいけないこの想いも、かろうじて救われるような気がする」

 身の程を知らない物言いをしても、グレイスは不快な顔をすることなく、ふわりと優しく目を細めてくれる。
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