現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
家に帰るまでの道のりも、家に着いてからも、不思議と涙は出てこなかった。

多分、ある程度覚悟していたからだと思う。
自分が悪い、っていう自覚もあるし。


……だけど、あんなにひどいことを言ってしまったのは、志木さんのことが好きすぎるからだったんだと、今さらながら強く思う。
もう、取り返しのつかないことをしてしまったけれど、それでも最後くらい、ちゃんと好きって伝えたかった……ダメになる前に伝えたかった……。
そうすればもしかしたら、志木さんも橋田さんのところへは戻らずに……


……って、そんなこと考えていても仕方ないのに。



家にはお父さんもお母さんもいなかった。

台所へ行くと、『お父さんと温泉行ってきます。帰りは明日の午前中!』とお母さんの字で書かれたメモが置いてあった。
また思いつきで行動してる、あの夫婦は。でも、今はその仲の良さがちょっとうらやましい。

お父さんもお母さんも、長年の間ずっと仲の良い夫婦なのに、なんで、娘の私はこんなにオタクで、ろくに恋愛もできない人間なんだろう。

こんな自分、嫌いだよ。


階段を上がって、部屋に入り、ベッドにうつぶせにダイブする。

なにもする気が起きなくて、ボンヤリとする。チッチッチッという時計の針の音が妙にクリアに聞こえる。


志木さんは、今ごろ橋田さんとなにをしているんだろう? お茶でもしているのかな。それとも買いもの? 遊園地?
普通の恋人って、普段デートではどこに行くんだろう?
私はまだ、志木さんと付き合って日が浅いから、よくわからない。今までちゃんとデートしてきたことほとんどなかったし。

もし、私が行き先を決めていいデートだったら、どこに行くだろう。
志木さんとだったら、いっしょにアニメショップやゲームショップに行ってみたい。
志木さんに、オススメの漫画やゲームを紹介したい。
慣れないメディアにちょっと戸惑いながらも、真剣すぎるくらいに話を聞いてくれる彼の隣にいたい。
……そうか、今日はせっかくの久しぶりのアニメショップだったのにいまいち気分が盛り上がらなかったのは、隣に志木さんがいなかったからかな。
志木さんは、こんなオタクでも、ありのままの私を好きだと言ってくれていたから。
時にはその言葉が信じられなくなることがあっても……それでも。私にとってあの言葉は、なによりもうれしいものだったんだ。
私の隣には、常に志木さんにいてほしい。
そんなふうに思ってしまうくらいに、私は彼のことが好きで、大好きで、たまらなくなっていたんだ。
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