現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
でも、とりあえずやらなくちゃ。明日までに融資を実行しなきゃいけないんだから。そう思い、書類に目を通していくけれど、うーん、ふたりを帰したのはやっぱりマズかったよね、と思い始める。

だって、今は席を外している課長になんて説明すればいい?
友だちとの約束……の部分はなんとかごまかしてあげるにしても、仕事を頼んだ課長になんのひと声もなく帰ったのは事実だ。まああのふたりは、明らかに課長が席を外したタイミングを狙って帰ったんだろうけど。


やっぱり、ちょっと引き止めてこよう。まだ社内にはいるよね。
仕事は私が引き受けるから、せめて課長にはひと声かけてから帰って、って言いにいこう。
私、係長だしな。そのくらいの注意なら……しても、いいだろう。


そう思い、私は席を立ち、営業室を出た。
すると、タイミングよくふたりの会話が壁の向こうから聞こえてきた。

よかった、と思い、ふたりに近づこうとしたけれど……


「マジでラッキーだったよね。井原さんが係長になってさ」

不意に、私の名前が聞こえてきて、思わず柱の陰に身を隠した。


「だってさ、気が弱いからいろいろうるさいこと言ってこないじゃん? まあ、課長もうるさいこと言ってくるタイプじゃないけど、あの人は怒らせると怖そうだし」

「わかるわかる。俺たちは課長よりも係長から指示受けることの方が多いしな。井原さんなら逆にこっちが仕事頼めそうだわ」

「それなー。今日合コンだし、遅れたらどうしようかと思ったー」

「マジ? 俺ほんとはなんの予定もないんだよね。お前に便乗して帰ってきただけだし」

「じゃ、いっしょに合コン行く? 奢ってもらうけどな」

「えー、どうすっかなー」

アハハ、と笑い合いながら、ふたりは私に気づくことなく、社員用出入口から出ていった。
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