現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
慌てる私をよそに、志木さんは、なんてことのなさそうな様子で、「どうした?」と私を見つめてくる。

いや、どうしたじゃないでしょー!

動揺して口をパクパクさせることしかできなかった私は、なんとか必死に言葉を絞りだす。

「い、いや、付き合ってると言っても、一週間前にそういう関係になったばかりだし、恋人らしいことなんてまだなにもしてないし、その」

「ああ、もしかして付き合って三ヶ月はセックスNGとかそういうこと?」

「セッ⁉︎」

「沙代がそう言うなら、もちろんなにもしないよ。だから泊まりに来て」

そ、そんな強引に言われたって、無理なものは無理よ!

あ、だけどここで断ったら、それは志木さんのお誘いを断ったというより、まだエッチNGだからという理由で断ったみたいな感じになるのではないか?

なんて言ったらうまく伝わるのか、なんて私が考えていると。


「じゃあ、十九時に駅前で待ち合わせ」

そう一方的に言って、志木さんは書庫室を出て行った。


……去り際にまた、頭ポンをして……。



あああ。また顔が熱くなる。こんな顔じゃ、営業室戻れないよ。



ダメだよ、私。翻弄されっ放しじゃないか。私は志木さんと付き合う気なんてないんだから、こんなにドキドキする必要なんてないのに。
そうよ、志木さんのことなんて、ただ受け流しておけばそれでいいのにっ。



でも、断れなかったということは、泊まりに行かなきゃいけない流れなのかな……営業室に戻ったら、周りの目があるから今の話の続きはできないし……。

いや、泊まりに行く必要なんてないよねっ。家に行く必要だってないよっ。
十九時に駅前で待ち合わせして、そこでハッキリと言おう。恋人同士だからって、お家には絶対行かないってーー……。
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