現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
すると。

「あー、うれしい」

電車に揺られている途中で、突然、志木さんがそんなことを言う。

なにがですか?と、私が問うと。


「沙代と一晩いっしょにいられるなんて、このうえなく幸せなことだから」

ほほ笑みながらサラッとそんなことを言われ、私の顔はまた熱を帯びる。


「かっ、からわかないでください!」

バッと顔を背けて、私はそう言うけれど。


「からかってないのに」

と、志木さんはクールな口調でそう答える。



とびきり甘い囁きかと思えば、冷静でなんてことのないように答えたり。

振り回されちゃいけない。そう思うのに、ダメ。やっぱり私、志木さんに翻弄されてる。



自分で自分を保つために、私は駅に着くまでの数分間、なるべく自分から志木さんには話しかけなかった。

志木さんも、その後はそれほど話題を振ってくることはなく、大半の時間は私と同じように無言で電車に揺られていた。なにも話しかけれないと、それはそれで彼の様子を伺ってしまいそうになる自分もいたけれど、彼は特にいつもと変わらない様子だったと思う。もともと口数が多い人じゃないし、これが彼の普通なのかもしれない。



数分後、彼の家の最寄り駅に到着した。

「降りるよ」

そう言われ、私も彼のあとについて電車を降りた。
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