現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「ほかにはないの?」

唐突に志木さんにそんな質問をされ、私は意味がわからず「え?」と聞き返してしまう。


すると。

「沙代のこと、もっと教えて。些細なことでも、沙代の全部を知りたいって思うから」

「……っ!」

ま、また、この人は!
ちょっと油断すると、すぐにこういうこと言うんだから!


「もうなにもないですよ! 知らないです!」

「自分のことなんだから、知らないことはないだろ」

「知りません!」

私は顔を俯かせて、そのまま志木さんについていくようにして歩いていく。


……大丈夫だよね。街灯が明るいとはいえ、私の顔が赤くなってるの、気づかれてないよね……?



志木さんのお家は、駅から徒歩五分ほどのところにあった。

「マンションなんですね。すごい」

建物を見上げながら私がそう言うと。

「だからなにもすごくないって。超高級マンションってわけじゃあるまいし」

志木さんはそう答えて、スタスタとマンションの中へと入っていく。私も慌ててあとをついていく。


ロビーを抜けて、エレベーターに乗り、志木さんが五階で降りたので私もそれに続いた。


超高級マンションじゃないとは言っていたけれど。それなりに部屋数あるなぁ、と廊下を歩きながら思った。
志木さんのお部屋は、五階の廊下の真ん中辺りだった。

志木さんが玄関の鍵を開けて、中に入る。


今さらだけど……もう、戻れない。
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