現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「さ、早く荷物置いたら?」

志木さんにそう言われ、私はお言葉に甘えてバッグを置かせてもらうことにした。

どこに置こうか、と部屋の中をキョロッと見渡すと、部屋の隅にある本棚に目がいった。

人のお家で本棚を見つけると、つい、なんの本が入っているか見てしまう。この人はどんな漫画を読むのだろう、と気になってしまうからだ。


……が。


「漫画が……ない!?」

思わず、思ったことが口からそのまま出た。
そのくらい驚いた。


「漫画?」

志木さんにそう聞き返されて、しまった、と思うけれど、彼には私がオタクであることはもう知られているのだし、隠すことはないかと思い、話を進める。


「はい。私的には衝撃が大きいです。
あ、ここはリビングだからですか? お部屋の本棚には漫画があるんですよね?」

「ないよ。邪魔になるから不必要なものはなるべく実家に置いてある」

「漫画が邪魔!?」

またしても、驚いてしまった。目玉が飛び出しそうになった。
だって、漫画は私にとって人生の必需品なのに。それを邪魔とか。


「あ、いやごめん。沙代の好きなものをバカにしたとかじゃないよ」

私が怒ったと勘違いしたのか、志木さんがフォローのような言葉をくれる。

「俺も漫画読むよ。この家にはないってだけで」

「え、本当ですか。ちなみに、なに読むんですか」

「ワ〇ピースとか普通に好きだよ」

「ああ! 名作ですね! 同じジャ〇プ作品なら、私はジョ〇ョも好きですよ!」

漫画の話になり、ついテンションが上がり、興奮気味で身を乗り出して話をすると、そんな私を、志木さんがジッと見つめる。


「あ、ごめんなさい。うるさかったですよね。ていうかいきなりテンション変わってすみません」

我に返って、すぐに志木さんに謝ると、彼は。

「いや、別に怒ってないけどなんで謝るの?
むしろ、ようやく楽しそうに笑ってくれたなってうれしくなったよ。
やっぱり、好きな子には笑っててほしいから」

と言ってくれた……。
< 50 / 142 >

この作品をシェア

pagetop