現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「……イチゴ」

「ん。まあ、ここ座れよ」

そう言って、彼は自分の隣をポンポンと叩く。


私は、緊張しながらもゆっくりとそこへ腰かけた。少しだけ、距離を作ったけれど。


彼は、私にイチゴのアイスのカップを手渡すと、自分はオレンジのアイスを口にしながら、「風呂上がりのアイスって美味いよな」と言う。私も、「……そうですね」と答えた。


アイスを食べながら、彼は。

「俺のブカブカのTシャツを着てる沙代が、なんかイイ」

「っ!」

「……とか。そういうこと言って困らせるの、ちょっとやめるね」

「え?」

思いがけない言葉に、私はカップのフタを開けることも忘れて、彼のことをじっと見つめた。

彼も、やさしい瞳で私をまっすぐに見つめて。


「好きだってことを伝えたくて、そういうこといろいろ言ってきたつもりだったけど。いつも困らせてたよな、ごめん」

「い、いえ。そんなこと……」

困らされていたのは事実なのに、そんなふうに謝られたら、つい否定してしまった。


困らされていたとはいえ、嫌な気分にさせられていたわけじゃないから……。



うれしくも、あったから。



「ていうか」

「え?」

彼の目を再びまっすぐに見つめると。


「良かった。ちゃんと目合わせてくれて。さっきはずっと逸らされていたから」

「あ、その。すみま……」

「謝らないで。でも、うれしいね。ちゃんと目を合わせて話せるのって。改めて思った」

やさしくほほえみながらそう言うと、彼は再びアイスを食べ始めた。


私も、手にしたままのアイスをようやく口に運んだ。

イチゴって、こんなに甘酸っぱかったっけ。
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