現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
もうこの際、一睡もしないで一晩中携帯でゲームでもしてようかな、明日休みだし。という考えもよぎったけど、ここは自分の家じゃない。しかも上司の家だ。一晩中電気を点けっぱなしにするのは良くない。かといって、暗闇で一晩中ゲームをしていたら、ただでさえゲームのやりすぎで裸眼の視力が低下中なのに、さらに目が見えなくなってしまう。

(ちょっと、外の空気を吸おうかな)

そう思い、私は布団から抜け、志木さんを起こさないように慎重に廊下を歩き、そっと玄関の戸を開けた。
すると……。


「え……」

そこには、手すりに肘をかけながら、タバコを吸っている志木さんの姿があった。


「あれ。もしかして、俺が玄関の戸開ける音で起こしちゃった?」

志木さんも私に気づいて、少し驚いた顔でそう尋ねてきた。


「あ、違います。眠れなかったので外の空気を吸おうと思って。志木さんが外に出てたなんて全然気がつかなかったです」

「そう。ていうか眠れなかったの? 大丈夫? まあ、俺もだけどね」

志木さんもですか? と尋ねながら、私はなんとなく、彼の隣に立つ。


「そうだよ。だって好きな子が隣の部屋に寝てるんだから……って、こういうこと言わないって宣言したんだった。ごめん」

「あ、いやその……」

なんて返したらいいかわからず、曖昧な返事しかできない。

ていうか、志木さんでもそんな理由で眠れなくなったりするんだ。


「……そういえば、タバコ吸うんですね」

彼の口もとを見つめながら私はそう尋ねた。職場では吸っているところを見たことがなかったから。


「ああ、うん。少しね。職場では吸わないようにしてるんだけど、家ではたまに」

「タバコっておいしいんですか?」

「え? いや、どうだろうな。俺のタバコ一本あげようか?」

「いらないです」

「はは。そうだね」

あ、笑ってくれた。
そういえばさっき、私が拒絶にも似た反応をしてしまったせいで、少し寂しげな顔をさせてしまった。

志木さんはクールな印象が強くて、笑顔に馴染みはまだないけれど。

それでも、やっぱり。


私、彼のこの笑顔が好きかもしれない。
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