現状報告!オタク女子ですが、エリート上司に愛されてます。
「さて。寒いし家の中戻った方がいいと思うんだけど、まだ眠くならない? もしあれなら、リビングでテレビとかDVDとか観ててくれてもかまわないけど」

志木さんはそう言ってくれたけど、なぜだか今なら気持ち良く眠れそうな気がした。


いっしょに家の中へ入り、部屋の前でもう一度「お休み」と言い合う。


……けど。

私がドアノブに手をかけた、その時。


ふわり、と背中にやさしい重みを感じた。



抱きしめられてる?



「あ、あのっ」

動揺して、軽く抵抗するけれど、彼は離れない。
抱きしめられているといっても、本当にやさしい力。多分、思いきり身体を動かせば簡単にふりほどけるだろう。でも、それができないのは、なんで?


「……沙代を困らせるのはやめる、って言ったはずなのに、ごめん」

その声は、なんだか本当に悲しそうなもので。志木さんのこんな声、聞いたことない。
今、どんな表情をしているんだろう?


志木さん……?と、なんとか彼の名前を呼ぶと、私を抱きしめる腕の力が少し弱まった。
そのままゆっくりと彼に振り向くと、至近距離で目が合った。
すごくドキドキして、すぐに目を逸らそうとしたけれど、彼があまりにもまっすぐに、そして真剣に私を見つめてくるから、私も彼の瞳を見つめ返してしまった。


すると……。



「なにもしないからいっしょに寝てくれない? って言ったら、寝てくれる……?」

「えっ!?」

悲しそうな、寂しそうな、そして甘えているような声色で突然そう尋ねられたから、私はどにかく驚いて、裏返った声をあげてしまった。

ね、寝る? いっしょに!?


無、無理でしょ、いくらなんでもそれは!!
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