理想の『名字』の男の子
『カカオ林! 珍名さんを名乗って、人をたぶらかすなんて許せない!』
足を肩幅に開いて、人差し指をビシッと彼に突きつける。すると、カカオ林くんのかっこよくて人の良さそうな顔は一変、凶悪な犯罪者の素顔をさらす。
『ふっふっふ……バレてしまったなら仕方がない。お前もこいつと運命を共にするんだな!』
バリーンと雷光が轟き、空に暗雲が渦巻き出す。
『きゃあっ、な、なに、これは?! 何だか、空気が熱帯みたいに熱くなってきてっ……?!』
凜花の悲鳴。はっ、空を見上げたあたしの頬に、ぽたりと黒い液体が落ちる。
『これは……チョコレートね?!』
『ふはははは、ハズレだ。これは発酵させたカカオから取り出された、100%ピュアナチュラルココアバター! チョコレートのような軟弱なものとは違うのだよ!』
『なっ……本当だわ、甘くない』
『そうだろう? しかし、甘くないのはそれだけじゃないぞ。……それっ!』
『この茶色い粉は……! 前が見えない!』
『これは完全無欠のココアパウダー! 最高級品は粉が細かく、素晴らしい香りがするのだよ!』
『くっ……たしかに素晴らしい香り……! カカオ林、その苗字は伊達じゃないみたいね。けれどっ!』
あたしは隠しておいた白い液体をぶちまける。
『ぐわっ! な、なんだこれは! ココアパウダーが溶けて……?!』
『ふふっ、これは給食の時に飲み残した牛乳よ。ココアパウダーは冷たい牛乳には溶けないけど、これは時間が経った生ぬるいもの。最高級品はすぐに溶けたようね』
『なっ、なんだと?! やめろおおおお!』
カカオ林くんがミルクの中に溶けていく。ココアの水たまりに取り残された凜花。走り寄るあたし。
『チョコちゃん、これ……』
『カカオ林くんの正体は、このココアだったのね。砂糖を入れ忘れたココアの苦さは相当なもの。作られたはいいものの苦くて飲まれなかった怒りが、カカオ林くんというモンスターを生み出したのだわ……』
夕日が赤く落ちていく。凜花の手を取り、あたしは次の戦いへと歩み出す――。
足を肩幅に開いて、人差し指をビシッと彼に突きつける。すると、カカオ林くんのかっこよくて人の良さそうな顔は一変、凶悪な犯罪者の素顔をさらす。
『ふっふっふ……バレてしまったなら仕方がない。お前もこいつと運命を共にするんだな!』
バリーンと雷光が轟き、空に暗雲が渦巻き出す。
『きゃあっ、な、なに、これは?! 何だか、空気が熱帯みたいに熱くなってきてっ……?!』
凜花の悲鳴。はっ、空を見上げたあたしの頬に、ぽたりと黒い液体が落ちる。
『これは……チョコレートね?!』
『ふはははは、ハズレだ。これは発酵させたカカオから取り出された、100%ピュアナチュラルココアバター! チョコレートのような軟弱なものとは違うのだよ!』
『なっ……本当だわ、甘くない』
『そうだろう? しかし、甘くないのはそれだけじゃないぞ。……それっ!』
『この茶色い粉は……! 前が見えない!』
『これは完全無欠のココアパウダー! 最高級品は粉が細かく、素晴らしい香りがするのだよ!』
『くっ……たしかに素晴らしい香り……! カカオ林、その苗字は伊達じゃないみたいね。けれどっ!』
あたしは隠しておいた白い液体をぶちまける。
『ぐわっ! な、なんだこれは! ココアパウダーが溶けて……?!』
『ふふっ、これは給食の時に飲み残した牛乳よ。ココアパウダーは冷たい牛乳には溶けないけど、これは時間が経った生ぬるいもの。最高級品はすぐに溶けたようね』
『なっ、なんだと?! やめろおおおお!』
カカオ林くんがミルクの中に溶けていく。ココアの水たまりに取り残された凜花。走り寄るあたし。
『チョコちゃん、これ……』
『カカオ林くんの正体は、このココアだったのね。砂糖を入れ忘れたココアの苦さは相当なもの。作られたはいいものの苦くて飲まれなかった怒りが、カカオ林くんというモンスターを生み出したのだわ……』
夕日が赤く落ちていく。凜花の手を取り、あたしは次の戦いへと歩み出す――。