次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
「イザークと言ったかしら?ひとつだけ教えてもらえる?」
「なんですか?」
「もし私がなんらかの罰を受けることになった場合、夫である王太子殿下に累が及ぶことはあるの?」
「普通に考えたらそれはないでしょうね。ただ、俺みたいな下っ端にはどうにもできない圧力がかかる場合は知りませんよ。白いものを黒くする魔法を使える人間もいますからね」
「そう‥‥」
「あぁ、馬車の用意もできてるみたいです。どうぞ」
イザークの視線の先に、装飾は地味だが頑丈そうな馬車が止まっていた。
プリシラは一歩踏み出そうとして、立ち止まった。ゆっくりと振り返る。
もうこの王宮に戻ってくることはできないかもしれない。自分だけでなくディルにまで危険が及ぶかもしれない。そう思うと、絶望で足が動かなくなりそうだった。
(ダメ、ダメ。悪いほうに考えるのは、やめよう。演技でも強がりでも、とにかくいまは気を強く持たないと)
プリシラは両手でパチンと自分の頬を叩いた。そして、顔をあげ、きっと前を見据えた。イザークはその様子を黙って見つめていたが、馬車に乗り込むプリシラの背中に声をかけた。
「さっきは絞首台なんて言って脅しましたが、あなたは無事に王妃になるような気がしますよ。俺の勘はよく当たるんで、安心してください」
「え?」
プリシラが振り返ると、イザークは右手を自身の左肩に添え、膝をついた。ミレイア王国では最上級の敬礼だ。
「次期王妃のお帰りを、心よりお待ち申し上げております。道中、お気をつけて」
「なんですか?」
「もし私がなんらかの罰を受けることになった場合、夫である王太子殿下に累が及ぶことはあるの?」
「普通に考えたらそれはないでしょうね。ただ、俺みたいな下っ端にはどうにもできない圧力がかかる場合は知りませんよ。白いものを黒くする魔法を使える人間もいますからね」
「そう‥‥」
「あぁ、馬車の用意もできてるみたいです。どうぞ」
イザークの視線の先に、装飾は地味だが頑丈そうな馬車が止まっていた。
プリシラは一歩踏み出そうとして、立ち止まった。ゆっくりと振り返る。
もうこの王宮に戻ってくることはできないかもしれない。自分だけでなくディルにまで危険が及ぶかもしれない。そう思うと、絶望で足が動かなくなりそうだった。
(ダメ、ダメ。悪いほうに考えるのは、やめよう。演技でも強がりでも、とにかくいまは気を強く持たないと)
プリシラは両手でパチンと自分の頬を叩いた。そして、顔をあげ、きっと前を見据えた。イザークはその様子を黙って見つめていたが、馬車に乗り込むプリシラの背中に声をかけた。
「さっきは絞首台なんて言って脅しましたが、あなたは無事に王妃になるような気がしますよ。俺の勘はよく当たるんで、安心してください」
「え?」
プリシラが振り返ると、イザークは右手を自身の左肩に添え、膝をついた。ミレイア王国では最上級の敬礼だ。
「次期王妃のお帰りを、心よりお待ち申し上げております。道中、お気をつけて」