次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
リノ離宮には日暮れ頃に到着した。かなり古い建物だが、予想よりずっと丁寧に手入れがなされていた。
「あぁ、はい。週に三度、私が掃除に通っておりますから」
ここの管理を担っているという老爺がそう説明してくれた。色々聞きたいこともあったが、かなりの高齢で耳が遠いらしく、なかなか会話にならない。
彼以外には門番として4〜5人の兵がいたが、彼らにとってプリシラは監視対象なので親しく口を聞いてはくれないだろう。それに、ちらりと姿を見ただけだが、王宮の護衛官とはずいぶん雰囲気が違った。粗っぽいというのか、とにかくあまり近寄りたい感じではない。
プリシラは夕食として出された冷めたスープとパンを食べ終えると、老爺に礼を言って部屋に引き上げた。
部屋の前にも監視の兵がつくのかと思いきや、一向に人が来る気配はなかった。
(意外とゆるいのね。まぁ、この造りだと入口ひとつ塞いでおけば十分ってことかしら)
プリシラは窓の外を眺めながら、冷静にそんなことを考えていた。
リノ離宮は小さな建物だが、堅牢な石壁に囲われており、出入口はひとつだけ。
プリシラひとりで石壁を飛び越えるのは不可能だし、万が一それができても建物の背面には湖が広がっている。逃げ出すには兵のいる門の前を通るよりほかにはない。だから建物内までは監視は不要と判断しているのだろう。
ベッドは床のようにかたいが、清潔なシーツがかけられているし、数日分の着替えも用意されていた。
快適とは言いがたいが、困ることはなさそうだ。
「退屈しそうだけど、しばらくはここで暮らすしかないものね」
むしろ絶望感な環境でなかったことに、感謝すべきかもしれない。
「あぁ、はい。週に三度、私が掃除に通っておりますから」
ここの管理を担っているという老爺がそう説明してくれた。色々聞きたいこともあったが、かなりの高齢で耳が遠いらしく、なかなか会話にならない。
彼以外には門番として4〜5人の兵がいたが、彼らにとってプリシラは監視対象なので親しく口を聞いてはくれないだろう。それに、ちらりと姿を見ただけだが、王宮の護衛官とはずいぶん雰囲気が違った。粗っぽいというのか、とにかくあまり近寄りたい感じではない。
プリシラは夕食として出された冷めたスープとパンを食べ終えると、老爺に礼を言って部屋に引き上げた。
部屋の前にも監視の兵がつくのかと思いきや、一向に人が来る気配はなかった。
(意外とゆるいのね。まぁ、この造りだと入口ひとつ塞いでおけば十分ってことかしら)
プリシラは窓の外を眺めながら、冷静にそんなことを考えていた。
リノ離宮は小さな建物だが、堅牢な石壁に囲われており、出入口はひとつだけ。
プリシラひとりで石壁を飛び越えるのは不可能だし、万が一それができても建物の背面には湖が広がっている。逃げ出すには兵のいる門の前を通るよりほかにはない。だから建物内までは監視は不要と判断しているのだろう。
ベッドは床のようにかたいが、清潔なシーツがかけられているし、数日分の着替えも用意されていた。
快適とは言いがたいが、困ることはなさそうだ。
「退屈しそうだけど、しばらくはここで暮らすしかないものね」
むしろ絶望感な環境でなかったことに、感謝すべきかもしれない。