パーフェクト・インパーフェクト
「いきなりうるさくしてすみません。きょうはよろしくお願いします」
ピカピカというより、こっちは和やかな感じの男が、ちょっと困ったふうに笑いながら、とても自然な動作でわたしたちのあいだに入ってきた。
「ベースしてます、皆川です」
皆川さん。
ベースなんていう重々しい楽器なんてとても連想できないような、やわらかい雰囲気だなっていうのが、第一印象。
いつのまにか差し出されていた右手に、わたしも慌ててぶかぶかのウィンドブレーカーから手を出し、そっと触れた。
ちょっとホネホネしている手が、優しい強さでわたしの右手を握る。
こんなに寒いのに、なんか、すごくあったかい手。
そして、指先がものすごく硬くて、驚いた。
「出演オファー、まさかOKしてくれるなんて思いませんでした」
皆川さんはとことん穏やかに言った。
その表情や仕草からは品格さえ漂ってきて、いわゆる“バンドマン”にもこんな人がいるんだなあ、なんておかしな感心さえしてしまう。
「こちらこそ、お話をいただいたときはすごくうれしくて! 今回の曲も聴かせていただいたんですけど、本当に素敵でした。ミュージックビデオのお手伝いができるなんて光栄です!」
とびっきりの笑顔を作って言った。
ベーシストのほうも、嬉しそうに笑い返してくれた。
「ありがとう。曲はね、ほとんどコッチが作ってて」
言いながら、その両手がガシッと掴んだ肩の持ち主は、信じられないくらい眠そうな顔をした男。
本当にこんな人が曲なんか作れるの?