パーフェクト・インパーフェクト


カメラマンを務めたのは旦那さまだった。

こんなに笑顔にさせる気のない「はいちーず」を、わたしはこれまでに一度も聞いたことがない。


「どう? こうちゃん、撮れた? 見せてーっ」

「うん、撮れてる」

「わあ、すごい、わたしのお顔がまるで肉団子のようだね……」


ひとつのスマホを覗きこむふたりは、理想の夫婦、そのもので。

もちろん恋人どうしだと言われても遜色ないけれど。


うん、とても、夫婦だな。

ぱっとつきあってちゃっと別れてしまうみたいな軽さが1ミリも見えないの。


なぜかいきなりぎゅうっと胸が苦しくなる。

いまわたしの隣にいるこの人にも、こういう顔をして笑いあう存在が、もしかしたらいるのかもしれないんだって思うと。


「あの、瀬名さんの奥様……すごくかわいいですね。というか結婚、早いですよね。まだ24とかじゃないですか?」

「うん、ふたり的にももう少し後でって予定してたみたいだけど。いろいろと事情があって」

「事情って?」

「夫婦には夫婦にしかわからないことがあるんだと思うよ」


あなたと、あなたの大切な奥様にもそれがあるから、そんなふうに言うのですか。

どうしてこんな状況でそんなにも穏やかに微笑んでいられるのですか。


ひとりで悶々とするくらいならいっそぜんぶ聞いてしまえばいいのに、聞いてしまったらおしまいな気がして、どうしても、なにも言えない。


なにがおしまいなんだろ。

なにが、こんなにも切ないの。

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