パーフェクト・インパーフェクト
「あの、よかったらいっしょにまわりませんか?」
藁にもすがるような思いだった。
この場にいる全員にとってありえない提案だというのはよくわかっている。
それでもこんな気持ちになってしまったあとで、これから俊明さんとふたりきりでいるなんて、とても耐えられなくて。
「ええっ! そんな……ふたりのおじゃまムシにならない?」
奥様がうかがうように訊ねる。
それは100%わたしが言わなくちゃいけないせりふだった。
「こうちゃんと、トシくんはどう?」
「俺はべつにいいよ。洸介と季沙が気にしないなら」
最初に答えたのは“トシくん”のほうだった。
“こうちゃん”のほうはなにか探るように、わたしのことを温度のない視線でじっと見下ろすと、とても長い数秒のあとに小さくうなずいたのだった。
「いいよ。季沙がけっこうしっかりファンみたいだし」
「えーっ、なんでわたしのせいにするわけ!」
ここまで思っておきながら、帰る、とどうにも言えないわたしはやっぱりバカ女かもしれない。
雪夜風に言うとボケナスかもしれない。
恋愛偏差値マイナス5千億がいきがるからこんなことになるんだ。
おとなしく身の丈に合ったオトコを相手にするんだった。
「あの、すみません、勝手なことして……」
「いや。たぶん季沙とはかなり気が合うと思うよ」
だけどね、それでもね。
あのとき、デートしてみるかと聞かれて、すると即答したわたしは、たしかにほかになんの邪心もなく、ただ純粋に、優しく肯定してくれる言葉の奥をもっと知ってみたいと思っただけだった。
だって、奥さんがいるなんて知らなかったの。
想像もしていなかったの。
甘いホワイトチョコレートを飲んでいるはずなのに、口のなかにあのハッカ味がよみがえって、どうにもヒリヒリしてしょうがないよ。