パーフェクト・インパーフェクト


さっきぽろぽろと耳にした『クリスマス前倒し』とか『当日は季沙のほうが休めない』とか『もうすでに準備始まってる』とか、いっきに腑に落ちていく。

クリスマスのケーキ屋さんはきっと想像もできないくらい忙しいはずだ。


ナチュラルなファッションに切りそろえられた短い爪、ほんのり色づいた程度の濃くないメイク。

おまけに生クリームみたいにやわらかい笑顔と雰囲気に、パティシエという職業がよく似合う。


こんな人が作るケーキはきっととってもかわいくて、そしてとってもおいしいんだろう。


「お店って都内ですか? 季沙さんのケーキぜひ食べたいですっ」

「えー、ほんとに? 杏鈴ちゃんが来てくれたらウチのお店パニックになっちゃうよ! ちゃんと変装して来てね」


ジョークみたいに笑って言うけど、いつか本当に行ってみたいな。


聞くと、どうやら青山にあるらしい。

小さいお店、と季沙さんは言ったけど、ぜったいお洒落で素敵なところに違いない。


「あの、ところでパティシエさんとミュージシャンって、どうやって出会うんですか?」


間違いなく“芸能人”と“一般人”。

それもなんの共通点もないような世界に住んでいる気がするふたりの出会いが、いかんせんろくに恋愛してこなかったものだから想像もつかなくて、興味本位で訊ねてしまった。


季沙さんがもともとバンドのファンだったのかな?

それとも季沙さんのお店に、たまたま瀬名さんがケーキを買いに行ったのがきっかけとか。


あれこれ脳内で妄想をくり広げていたのに、返ってきた答えはきっと100年かかっても思いつかないようなものだった。

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