パーフェクト・インパーフェクト
「あ、こうちゃんとはね、実家がお隣どうしなの」
本当にびっくりして、持っていた紙コップを危うく落としそうになる。
「それってつまり俗に言う……」
「うん、幼なじみなんだ。生まれたときからずっといっしょでね」
ほええ、と自分でも聞いたことのないようなまぬけな声が出た。
だって心の底から感激したの。
“生まれたときからずっといっしょ”の男女が、好きあって、つきあって、結婚まですることが本当に現実にあるんだなあって。
そんなのは漫画のなかだけの話かと思っていた。
ふたりから自然と醸し出される夫婦みたいな空気感、あれを思い出して妙に納得してしまう。
重ねてきた年数がきっと桁違いなんだ。
「なんだかとっても理解です! だからご結婚も早めだったというわけですね」
「そうだねえ。ずっといっしょだったからこそ、逆にタイミング逃しちゃうかと思ってたんだけど」
結婚するとかしないとか、季沙さんのほうは実はあまり考えたことがなかったらしい。
家族のように育ってきたはずの幼なじみがまじめにスーツを着て実家に結婚の挨拶に来たときは、あまりの仰々しさに現実感がなかったって。
まわりに結婚している人っていないから、こういう話を聞くだけでおとぎ話を読んでいるようで、どきどきした。
「あの、ちなみにバンド内では瀬名さんだけなのでしょうか……?」
「結婚してる人?」
「はいっ」
ものすごく迷ったけど、このチャンスを逃したらもう二度と聞くことができない気がした。
「あ、ううん、こうちゃんだけじゃないよ」
ゴクリと、生唾が音を立てて喉を通過していく。