パーフェクト・インパーフェクト
「ありがとう。気にしてくれて」
微笑んだ彼が、通りすがりのゴミ箱に紙コップをぽんと簡単に入れこんだ。
自分で出したゴミくらい自分で捨てられるよ。
ゴミ箱が見当たらなくてずっと持っていただけだもん。
「それとも杏鈴ちゃんのほうがまずかった?」
「えっ……」
「さっきからずっと不安そうな顔してるだろ」
さらりと、こんなにも普通な感じで前髪に触れられるとは思いもしなくて。
とてもじゃないけど後ずさったわたしに、彼は笑みを崩さないまま眉だけを下げた。
「なにかあった?」
わかっていて、そういうことを聞くのかな?
自分のことはなんにも教えてくれないくせに。
余裕そうに微笑んで、当たり障りのないことばかり言うくせに。
もう聞いちゃおうかな。
ぶちまけちゃおうか。
結婚してるんでしょって。
ほんとのこと教えてって。
わたしのことガキだと思ってなめてるんでしょって。
まあ、聞くまでもなく、名実ともにわたしがこの人にとってガキなことはたしかだ。
「……なんにも、ないです」
だけどどうしたって、
そう、わたしはガキだから。
圧倒的に大人な微笑みを前にするとなんにも言えなくなるんだよ。
そう、ごめんね、実は結婚してるんだ、って。
困ったように微笑みながら言われるくらいなら、そんなのは知らないほうがいい。
知りたくなんてない。