パーフェクト・インパーフェクト


容赦なく上下するエレベーターにギャアギャア声を上げまくるわたしの隣で、彼は余裕そうに小さく「ワァ」とか言いながら笑っている。

さっきのジェットコースターでも顔色ひとつ変えていなかったし、彼はいったいどんなことでなら、この完璧な表情を崩すんだろう。


アトラクションが終わり、へろへろになりながら立ち上がったわたしの前に、またもあの手のひらが伸びてきていた。


「……また、“つかまって”いいんですか」


ふてくされたような声が出た。

大きな手のむこうで彼が笑う。


「うん、いいよ」


べつにこれは、手をつないでいるわけじゃないので。

つかまらせていただいているだけなので。


この暗がりを抜けたらぜったい離してやる、
と心に決めていたのに、先にそうしたのは彼のほうだった。

ぱっ、と音が聞こえそうなくらい、本当にあっさり。


行き場を失った右手の汗が太陽の光でたちまち乾いていく。


「ちょっとトイレ行ってきてもいい? ごめんな」

「あ、そういうこと……」

「ん?」

「いえ、こっちの話ですっ」


なんだか無性に気に入らないのはむこうから先に手を離されたからであって、決してそうされたこと自体に対してじゃない。

断じて。

断じて、そう。


近くの柱にもたれかかってスマホをいじる。


きょうの日程を伝えてあったからか、お昼ぐらいに雪夜から『生きてるか?』とメッセージが来ていた。

『なんとか生存中』と返しておく。

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