パーフェクト・インパーフェクト


「……ちょっと頭冷やしてきたら」


冷えきった体をブカブカのウインドブレーカーで温めてくれながら、いけちゃんが波よりも静かに言う。


「きょうの仕事はこれで終わりだし、ちょっと見てきたら? 好きでしょ、海」


おじいちゃんの家が海辺にあったから、小さいころはよく泳いでいたこと、いけちゃんに何回話したっけ。

まだ日焼けとか美白とかぜんぜん気にしていなかった時代、夏はまっくろに焼くのが恒例だった。
歯だけが白いなって、家族が笑ってくれるのが好きだった。


中学生でこの仕事を始めてから、同年代の女の子はできないようなスペシャルな経験をいっぱいさせてもらって、いろんなものを数えきれないくらい手に入れてきたけど。

そのぶん、諦めて、手放して、我慢してきたことだってある。


もう何年のあいだ、夏の海でおもいっきり泳いでいないんだっけ?

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