パーフェクト・インパーフェクト
靴を脱ぎ、押し寄せる波に、足先だけをちょんと差し出してみる。
一瞬触れただけなのに、冷たすぎて、つま先がとれたかと思う。
それでも、海は、どこまでも美しかった。
もうほとんど沈みきっている太陽が、水平線の果てだけにオレンジを落として、世界全体をグラデーションに染め上げているみたい。
これから朝を迎える街のことを思うと気が遠くなった。
地球は休まないできょうもまわっているんだって、当たり前に知っている事実にさえ感動する。
まだまだ、がんばろう。
帰ったら、サボらないでスキンケアをして、夕食は食べすぎないようにして、あした時間があったらジムに行こう。
わたしは“プロ”だから、もう誰のこともガッカリさせないようにしなきゃ。
いつまでもこの場所にいたいって、
この仕事が大好きだって、
落ち込むことがあるたびに思い知らされる。
誰にも負けたくない。
自分にだって負けられない。
波の音と呼吸音のみが存在しているだけの場所に、突然カシャという機械音が落ちてきて、はっとした。
振り返ると背の高い影がビクッと動いたので、つられてわたしもビクッとしてしまう。
「ごめん、つい」
フランクに謝ったのは皆川さんだった。
ちょっと微笑んでいるのが薄暗いなかでもわかる。
「すごくいい雰囲気だったから盗撮しちゃった」
こんなに軽い謝罪がある?
ぜんぜん悪いと思っていなさそうな皆川さんは、長い脚を一歩ずつこちらへ寄せてきて、たったいま撮ったばかりの写真を見せてくれた。