パーフェクト・インパーフェクト
それにしても、慈しむように頬をナデナデしてくれる手のひらがあったかくて、お姉ちゃんは感動で泣きそうだよ。
「お兄ちゃんってなんでいつもアンちゃんのこといじめるわけ?」
「しょうがなくね。こいつが不倫してるって言うから」
そんなことは一言も口にしておらぬわ!
けれど否定する間もなく、純粋な海帆が信じられないという目をこっちに向けた。
いたいけな女子中学生まで巻きこんでありもしないことをほざくのって、名誉棄損で訴えられる?
「違うの、海帆、ごめんね、不倫なんてぜったいしないよ。これは雪夜が勝手に言ってるだけで」
「『勝手に』? おまえが既婚男とデートしたのは事実だろうが」
「彼、既婚じゃなかったから! 超・独身だったから!」
「は?」でも「あ?」でもないような、とにかくもう凄みのある声が顔面にぶつかってきた。
「杏鈴のことだからどーせうまいこと丸めこまれて騙されてんだろ」
「ぜったい騙されてない! おうち行ったけどひとり暮らしって感じだったし、ほかの女の人がいる感じも微塵もしなかったもん」
海帆の制止もかなわず、もういちどガシッと顎を掴まれた。
「いま、なんつった? 家までついてったって言ったか?」
しまった。
つい口が滑ってイランこと言っちゃった。