パーフェクト・インパーフェクト
あまりに現実離れしている美しい顔が10センチくらいの距離にあって、まっすぐ見つめてくるのに、最高に不機嫌な表情をしているせいで本当に台無し。
自分でもぜひ一回見てみたほうがいい。
同時に、彼の優しい、ちょっと困ったみたいな笑顔を思い出して、なんだか無性にむかむかしてきた。
あの顔がこの距離にあってくれたらいいのに、と目の前の般若を眺めながら思う。
彼とわたしのあいだに雪夜は関係ない。
なんでこんなことされて、こんなふうに言われないといけないわけ。
「……つきあうことになったから」
「は?」
「彼氏ができたって言ってるの! ちゃんと独身だし、もう雪夜に関係ないでしょっ」
見た目よりはるかに強い力の右手から無理やり顔を引っこ抜く。
かなり痛かったけどそんなことはどうでもいい。
迎えてくれた海帆がまた頬をさすってくれた。
ちょっとさみしそうに眉をハの字に下げている。
「アンちゃん、海帆なんにも聞いてないよー」
「ごめんね、報告が遅くなっちゃった」
「どんな人なの? どこで出会ったの? アンちゃんの彼氏になれるなんてうらやましすぎる!」
雪夜のことは完全無視して、恥ずかしかったけどなれそめみたいなものをしゃべった。
雪夜にはあまり聞かれたくなかったけど、当てつけみたいに聞かせていたのも半分くらいは本当だ。
もう二度と恋愛偏差値マイナス5千憶なんて言わせないし。
わたしだって人並みに恋愛くらいできるし。