パーフェクト・インパーフェクト
「――つーか、その男は杏鈴が“元ブス”だってこと知ってんの?」
キャッキャと女子トークで盛り上がっているところに、わたしにとっては死刑宣告のようなせりふが落ちた。
顔も背中もなにもかもが凍りつくのをまざまざと感じた。
動けないわたしのかわりに、海帆が顔をしかめる。
「なに言ってるの? アンちゃんは昔からチョーかわいかったけど!」
「まごうことなきブスだっただろ。日焼けしまくりの浅黒い肌で、髪なんかクルクルなのを無理やりセンター分けの三つ編みにしてさ、まさにイモ女の日本代表って感じ」
「ねーお兄ちゃん、いいかげんにしてよ。女の子はお化粧とかヘアアレンジとか順番に覚えて徐々にかわいくなっていくんだから」
応戦してくれている、鼻にかかったような声が遠ざかっていく。
雪夜の言うとおり、わたしが“元ブス”だったのは本当の話だ。
垢ぬけていなかっただけだと言い訳できないくらい、いまとはぜんぜん違っていたと思う。
整形は本当にしていないけど、小学校の卒業アルバムとか流出してしまったら、世間からはきっと必ずそう言われるだろう。
ブスだったわたしをカメラマンのゲンさんが見つけてくれたのが、中学2年の春。
学校が早く終わって、なんとなくママのお仕事の見学についていったら、ヒゲを生やしたお洒落なおじさんに声をかけられたんだ。
“――ちょっとだけ写真撮ってみない?”
何気ないその一言がきっと、わたしの本当の人生の始まりを告げる合図だった。