パーフェクト・インパーフェクト
思わず固く握りしめた手を、ぎゅっと包みこまれた。
優しくほどかれ、手をつながれる。
はぐれないように昔はよく引っぱって歩いてあげていた手、いつのまに、こんなに大きくなっちゃったんだろ。
「アンちゃんごめんね。お兄ちゃん、大好きなアンちゃんに彼氏ができてやきもちやいてるだけだから、気にしないでね」
完全に聞こえていたらしいオニイチャンがぎろりとこちらをにらんだ。
「は? てきとうなことばっか言ってんじゃ」
「はあ? お兄ちゃんがてきとーなことばっか言うからコッチもお返ししてるだけですケドー」
さすが、15年もダテに雪夜の妹やってないよ。
魔王みたいな兄の扱いをよく心得ていらっしゃる。
これ以上ないほど不機嫌そうに黙りこんだ雪夜を尻目に、海帆がおもいきりあっかんべーをして、ちょこんとわたしの膝のあいだに座ってきた。
「ねーアンちゃん、編みこみしてっ」
「いまから? もう寝るだけでしょ、すぐほどかないとダメだよ?」
「いいのー! いましてっ」
自分だとどうしても上手にできないからと言って、海帆はわたしに会うといつもヘアアレンジをねだってくる。
特に編みこみが好きみたいで、おかげでわたしもいつのまにかかなり上達してしまった。
生まれてからパーマやカラーをいっさいしていない、つやつやのバージンヘアをすくい上げる。
少しでも油断するとほろほろ落ちていってしまいそうな毛束を丁寧に編んでいく。
「ありがとうっ。かわいい~!」
ただ髪を編んだだけなのにこんなにも雰囲気が変わるのって不思議だな。
女の子はやっぱり無限の可能性を秘めているのかもって思う瞬間が、いまだにたくさんあるよ。