パーフェクト・インパーフェクト
「年末年始はゆっくりできた?」
はい、と答えながら、同じ疑問が浮かんだ。
「俊明さんは地元に帰ってたんですよね」
「そう、大晦日は地元のライブハウスでカウントダウンライブするのが恒例行事だから」
そうだ。
つきあっているくせにそんなことさえ知らなくて、当日、彼らのSNSと彼からのメッセージで知ったときは、恥ずかしかったし、悔しかった。
彼がステージに立っていたころ、わたしは国茂雪夜と喧嘩をしていたよ。
ほんと、なにしてたんだよ。
「来年……あ、今年になるのかな……とにかく次は、わたしも見にいっていいですか?」
部屋の片隅にすらりと立つ4弦の楽器が視界に入る。
そういえばわたし、彼があれを弾いているところ、ちゃんと見たことがないな。
彼はいつあの楽器と出会い、どんな経緯を経て、いまのお仕事にたどり着いたんだろう。
「もちろん、いいよ。でもちゃんと楽しめるか心配だな」
「ライブってどんな感じなんですか?」
「うるさくて苦しくて狭くて痛くて暑い。もしかして行ったことない?」
「う……ナイ、です」
なんとなく自分から線引きをしちゃったようでさみしくなる。
「今度ベース弾いてほしい……です」
「弾くだけならべつに、今度じゃなくて今夜でもいいよ」
「ええっ、いいんですか!」
「うん、でもたぶん、ギターとかのほうが見てる分にはおもしろいと思う」
お風呂入ったらいっしょに触ってみるかと言ってもらい、ゲンキンなわたしはソッコーでバスルームにむかった。
ちょー急いだけど、こないだよりももっと念入りに洗ったし、洗面所でしっかりパックもしたし、体中にボディクリームを塗るのもサボらなかった。
だって、今夜が、決戦の日かもしれない。