パーフェクト・インパーフェクト
「そうだね。きょう、寒いのに頑張ってくれてありがとう。プロって感じだった。俺らみんなあっちで『すげー』しか言えなかったよ」
眉を下げ、肩をすくめて笑うのを見て、ギクッとした。
さっきの会話、いけちゃんに怒られているの、もしかして丸聞こえだった?
そんなことない。
メチャクチャ離れた場所にいたし。
それに、たとえこの人がものすごい地獄耳の持ち主で、もし聞こえていたとしても、こんなふうに優しい言葉をかけてもらえる義理なんか、いっこもないわけで。
「あの……押しちゃってすみませんでした。それこそ、こんな寒いなかで……」
頭を下げたのに、皆川さんはなんにも言わないで、ずっと微笑んでいる。
いいとかヤダとか早く言えって思ったけど、あまりにも和やかな表情は決してわたしを責めていなくて、なんだか体から力が抜けちゃう。
「あの」
「いいMVになると思う」
太陽はすでに海底へ潜ってしまった。
チカチカまたたき始めた星屑が、広い肩のむこう側に見えて、泣きたくなるほどきれい。
「ありがとう。上月さんのおかげ」
上月さん、だって。
気軽に名前で呼ばれることのほうが圧倒的に多いから、なんだかかしこまった気分になる。
きっと認めてくれているんだって思った。
年下のコをガキンチョとしておだてているんじゃなく、ひとりの社会人として見てくれているんだって。
いい人だな。
いっしょに仕事ができてよかった。
同じこと、この人にも、あとの3人にも、思ってもらえていたらいいな。