パーフェクト・インパーフェクト


「口説いてんじゃねえよ! 抜け駆けか?」


菩薩のような顔がいきなり上下にガクンと動いたので、ビックリ。

いつのまにか皆川さんの首に腕をまわしているアキさんが、ニヤッと笑う。


それにしても、よくよく見ると、本当に整った顔をしている。
みんなけっこうカッコイイけど、この人だけ本当に格が違う。


顔立ちは弟もよく似ているけど、
なんだろう、雰囲気もあるのかな、

きっと自分の魅せ方をよく知っているタイプの人なんだろうな。


じっと観察してしまっていると、猫みたいなつり目とばっちり視線が合った。


「変なこと言われなかった?」


ヘンなコト、とは?

むしろ落ちこんでるところにとても優しくしてもらってこっちが申し訳ないくらいです、
と言いかけたのを、アキさんの「気をつけたほうがいいよ」という言葉が遮る。


「人畜無害な顔してっけど、ウチはこいつがいちばんのクセ者だから」

「ほんとにアキはテキトーなことばっか言うのやめろって……」


たしかに、げんなりした顔で頭を抱えているのにずっと笑顔を絶やさないし、こういう人のほうが怒るとコワイって言うかも。

うさんくさいって言うかも。


あんまり優しい人はその分ウラがあるんだよって、この業界に入ったばかりのころ、ママにも忠告されたことがある。


「どういうところが『クセ者』なんですか?」


すこし興味が湧いて訊ねると、アキさんが、苦いようなすっぱいような顔をした。


「あー、聞かないほうがいいよ、なんも信じられなくなるから」

「マジでおまえ」


皆川さんがあきれたように笑う。
本当にずっと笑っている。


だけど「おまえ」とか言っちゃうんだな。

意外だ。
「おまえ」のかわりに「きみ」とか使いそうな感じがするのに。

< 19 / 386 >

この作品をシェア

pagetop