パーフェクト・インパーフェクト


「俺も最初はそんな感じだったなと思って」


そんなせりふを聞いてしまったら、“最初”のころのこと、どうしても知りたくなっちゃうよ。


「ベースは何歳のころからやってるんですか?」

「中2かな。といっても最初は、暇なとき家で触ってるだけだったけど。高校に軽音部があって、本格的にやり始めたのはそれくらい」

「ということは、皆さんとはその軽音部で……?」

「いや。洸介はコピーばっかやってる高校の軽音部になんて所属しないタイプの、すでに完成された“ミュージシャン”だったから。そんなやつがなにを思ったのか俺を突然スカウトしに来て、一緒にバンドやらないかって誘われて。それが、始まり」


洸介に会ってはじめて天才という存在を実感した、
と、彼は続けた。


瀬名さんはひと学年下の後輩だったけど、はじめからぜんぜんそんなふうには思ってなかったって。

年下のこと、真剣に尊敬していると言いきった彼のことも、わたしはすごい人だって思った。


それにしても、瀬名さんの幼なじみだという季沙さんのことが、心の底からうらやましい。


だって、あの人はずっといちばん近い場所で彼らを見てきたわけでしょ。

たぶん、世界に唯一の特等席で。


できればわたしも、まだ高校生だった彼と出会って、いっしょに10代を過ごしたかったって、こんな話を聞いたら思わずにいられなくなってしまう。

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