パーフェクト・インパーフェクト
「がっかりした? 俺って実はこんなやつだけど」
ふるふる、おもいきり首を横に振る。
がっかりなんて絶対しないもん。
「でもわたしがいろいろ聞いちゃったから……、ごめんなさい、言いたくないこと言わせて」
「言いたくないわけでも、隠しておきたいわけでもないよ。ただ自分からあえてするような話ではないと思って。だから聞いてくれてよかった。逆に気を遣わせてごめん」
どうしてこんな、本当になんでもない、みたいな顔をするんだろう。
体のいちばん奥がなんだかとても苦しい。
彼が生まれ育った場所を離れたそのとき、ほかの誰でもない、わたしが傍にいたかった。
わたしがいるよって、彼に寄り添いたかった。
過去にタイムスリップはできないかわりに、いまその分だけの気持ちをこめて抱きしめる。
抱きしめる、というより、首に抱きつく感じになってしまったけれど。
「俊明さんは冷酷な人じゃないです」
首にくちびるを押しつけながらしゃべったせいで、もごもごとした響きになる。
「そうかな。少なくとも俺は、言ってくれるほど優しいやつではないと思うけど」
「絶対にそんなことないです」
まだまだわたしはあなたのこと、きっとぜんぜん知らないけど。
それでも、してもらったこと、かけてくれた言葉、むけてくれる笑顔、
ぜんぶちゃんと、わたしのなかに残っている。
「わたしが優しいって感じる限り、わたしのなかで俊明さんは超・優しい人です」
なるほど、と彼はこぼし、咀嚼するみたいにゆっくりうなずいたのだった。