パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


けっきょく誕生日は、彼がどうしても仕事で、日中のデートはできなかった。

でも、夜に落ち合うのもなんだかムードがあって、これはこれでけっこういいな。


きょうは大人っぽいワンピースを着ているし、耳にはホワイトデーにもらったシンプルなピアスをくっつけてきている。


「はあ……やっぱりなんか緊張しちゃう、ざわざわする」


都心にある、絶好の夜景が見渡せるレストランで、フルコースのディナー。

飲みものはシャンパン。

ジュースじゃないから飲みすぎたらダメだよ、
と、最初に、子供に言うみたいな釘を刺された。


それにしても彼は、やはり育ちのせいなのか、テーブルマナーが完璧だ。

何回でも見とれてしまう。


「俺も緊張してる」


緊張のキの字もないくせに、そんなことを平気で言うんだからな。


「うそだあ」

「ほんとだって。俺、普段は居酒屋でビール飲んでるようなやつだよ」


たしかに言われてみれば、最初の飲み会の居酒屋での振る舞いも完璧だった。


郷に入っては郷に従え、というか、臨機応変、というか。

そういうの、すごく上手なんだろうなと思う。


ああでも、そうか、そういえば、あの飲み会からもう半年くらいが経つんだ。


不思議。


あのときはまさか、誕生日を彼と過ごしているなんて想像もしていなかった。

こんなにも大好きになって、つきあっているなんて、思いもしなかった。


うそ。

好きになるというのは、
……1ミクロくらいは、胸のどこかで予感していたかも。

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