パーフェクト・インパーフェクト


お誕生日プレートの乗ったケーキをいっしょに食べた。

残った分は部屋まで持ってきてもらうことにした。


レストランの上階が客室になっており、そこに部屋を取ってくれているらしい。


事前に知らされてはいたけれど、いざルームキーを目にすると、緊張はもう最高潮。


だって……はたちになったら、の約束。

それが、今夜、果たされるわけで。


シャワーを浴びて(いっしょに浴びるかっていじわるを言われたけど全力拒否した)、髪を乾かして、歯みがきをして、ベッドに座って待っていたら、続いてぜんぶ済ませてきた彼にちょっと笑われた。


さすがに待ちかまえているのはよくなかったかもしれない。

やる気満々だと思われたかも。

いや、そんなこと、もうとっくの昔から思われているか。


まっさらなダブルベッドの淵に彼が腰かける。

ギシと小さく鳴いたスプリングに、思わず肩が跳ねてしまった。


「怖い?」


大きな右手がそっと頬を撫でる。

無理強いはしないよ、と、優しい目が、言っている。


いやだ。


「怖くない……よ。いっぱい練習したもん」

「うん、でもちょっと震えてるね」

「やだ……」

「うん? やだ?」

「やっぱりやめる……は、やだ」


好きですと伝えたときよりも、どんな瞬間よりも、一生分の勇気を使い果たす勢いだったかもしれない。


わたしから、彼の口元にくちびるを寄せた。

でも、わたしがキスする前に、彼のほうから重ねられていた。


「……大丈夫。やめないよ」

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