パーフェクト・インパーフェクト
どうしてこんなにも泣きたくなるの。
“練習”のときとはぜんぜん違う。
わたしをベッドに沈めた彼は、いつもみたいに余裕に笑いそうな、そういう顔はしていなかった。
「怖かったらすぐに言って」
耳元で、いつもよりほんの少し低い声が、最後の逃げ道を与えてくれる。
どこまで、優しくしてくれるの。
そんなのはもうとっくに必要ないのに。
このままぜんぶ、奪ってほしい。
わたしをぜんぶ、あなたのものにしてほしい。
耳から降りてきたくちびるが、そっとわたしのそれを食べた。
ぷちゅ、とかわいい音が鳴る。
触れている場所の隙間で、彼がそれに反応して、ちょっと笑った。
それから、彼はゆっくり、時間をかけて、わたしに触れた。
たくさんキスしてくれたし、たくさん抱きしめてくれたし、たくさん名前を呼んでくれた。
大丈夫かって、何度も聞いてくれた。
声とか、表情とか、わたしのすべてを何度も確認してくれた。
この世でいちばん穏やかなシーツにくるまれたわたしは、あまりにも無知で、初で、ガキンチョだった。
おかげで必要以上に泣いてしまった。
痛いのか、気持ちいいのか、なんなのか、もうよくわからない。
ただひとつわかっているのは、彼の腕のなかで、わたしはいまとても、幸福だということだけ。