パーフェクト・インパーフェクト


金庫のような、宝箱のようなそれを目の前に差し出すと、彼は目を見張った。


「中身もぜんぶ見たよ。写真と手紙と万年筆が入ってた」


いつも余裕綽々な表情が強ばる。


「ほんとは、捨てられないんでしょう?」


踏みこんではいけないところって、なに?

どうして踏みこませてくれないの?

大切な人のこと、現在も、過去も、ぜんぶ知りたいって思うのはいけないことなの?

そうやってふたりで未来を作っていくんじゃないの?


少なくともわたしは、あなたが誰かに負わせた傷も、誰かに負わされた傷も、知って、抱きしめて、あたためて、癒やしたいと思ったよ。

どうにもできない悲しさや寂しさを抱えているなら、その半分をわたしが持ちたいと思ったよ。


だって、俊明さんのことが、好きだから。


「鍵を……かけ忘れてるわけじゃないんでしょ。かけられずにいるんでしょ。家族のことも……“しのおか・えみり”が誰なのか知らないけど、その人のこともっ……」



「――篠岡衣美梨は、昔、本気で好きになった子だよ」



涙をダイヤモンドだと比喩するなら、その輝きは瞬く間に砕け散って、粉々になってしまった。

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