パーフェクト・インパーフェクト
ずっと傍らに置いていた、クシャクシャになってしまった写真と手紙、それから万年筆。
どうやら朝になるまで握りしめたまま眠っていたらしい。
おかげでもっとクシャクシャになってしまっている。
泣くのは我慢して、ぐいぐいと手のひらで引き伸ばした。
一度ついてしまったシワは消えない。
きっと完璧に元のようには戻らない。
だけど少しはきれいになっていくよ。
写真は顔がわかるくらいにはなったし、手紙も宛名がちゃんと読める。
「……『篠岡衣美梨』さん」
むかし本気で好きになった子だと、彼は言った。
妹じゃなかった。
衣美梨さんと、つきあっていたのかな。
それとも彼の片想いかな。
これはなんの手紙だろう?
そういえば、切手が貼ってない。
再着されていた糊を丁寧に剥がし、便箋を取り出す。
盗み見はぜったいによくないと思ったけど、彼はもうこれを捨てたわけだし、いいよね。
だってあんな姿ははじめて見たの。
どこをとっても冷静じゃなかった。
冷静さを失いながらも、平静を装うので精いっぱいな、あんな彼は見たことがない。
まだぜんぜん、整理がついていないのだと痛感した。
きっと蹴りをつけられないままここまで来てしまったんだ。
家族のことも、そして、衣美梨さんのことも。
手紙は、『これで最後にします』という一文から始まっていた。
ラブレターなんかじゃない。
これは、彼女から彼へ、――別離の便り。