パーフェクト・インパーフェクト
「ということは……ふたりはきっと心から望んで、別離したわけではないんですよね?」
季沙さんも瀬名さんも本当に困り果てた顔をした。
たしかに、いま彼とつきあっているはずのわたしにこんなことを問われて、はいそうですとは言えないよね。
「お願いします。教えてください。わたしにしかできないことが、きっとあると思うんです」
次に口を開いたのは瀬名さんだった。
ためらうような物言い。
それでも、引き下がらないわたしに、とうとう諦めたらしい。
「たぶんその子が結婚してすぐくらいだと思うけど、トシとふたりで飲みにいったことがある。俺は結婚のこと知らなかったけど、奢るから一杯つきあってくれってめずらしく誘われて、酔ったトシにその話をされた」
季沙さんも目を見張る。
きっと瀬名さんははじめてこの話を口にするんだと思う。
「こんなに後悔すると思わなかったって言ってた。地元を出るとき無理やり連れてきておけばよかった、なにしてんだろうって、けっこうべろべろに酔ってた。トシのあんな姿、後にも先にも、あれっきり」
わたしが泣いたら、季沙さんが泣いた。
わたしの涙よりもずっと重たいそれは、彼と彼女の歴史を知る人にしか流せないものだ。
「いま……篠岡衣美梨さんと、連絡がつきますか?」
慌てて涙を拭った季沙さんが顔色を変える。
たぶんこれは、わたしを気遣ってくれている表情。
「杏鈴ちゃん、もうぜんぶ終わったことなんだよ。衣美梨ちゃんはもう結婚してるし、トシくんはきっといますごく杏鈴ちゃんを大切にしてる。だから昔のことは……」
「だからこそ、です」