パーフェクト・インパーフェクト


「――篠岡衣美梨さん、ですか?」


彼女の容姿はまったく知らなかったけれど、なんとなく、ひと目で確信が持てた。


胸の下まであるロングヘア、もともと色素の薄そうなダークブラウンをゆるいハーフアップにして、毛先だけ大きく巻いあるのがとても似合う。

五分袖のワンピースは7月上旬の気温には少し暑いと思うのだけど、彼女にはそれをまったく感じさせない清涼感みたいなものがあった。


シャンパンゴールドのアイシャドウがふわりと持ち上がる。

優しいたれ目。
ふつうの顔をしていても、どこか微笑んでいるように見える形。


この人が、彼が昔、本気で好きになった女性。


花のような香りがする。


「上月杏鈴さんですね。はじめまして。武田(、、)衣美梨です」


そうだ、しまった、
既婚の女性に対して失礼な呼びかけをしてしまった。


左手の薬指にシルバーを見つけたけど、すぐに、視線を逸らした。

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