パーフェクト・インパーフェクト


視線を上げた彼女の微笑みは、なんとも形容できない、儚い色をしていた。

けれどわたしはこういう笑い方をよく知っている。


時折、彼が見せる笑い方。

眉がハの字になった、困ったような……どこか、寂しげな。


「衣美梨さんは、どうしてほかの男性と結婚したんですか?」


どストレートすぎて自分でもウンザリする。

なんだこれ。
もうちょっとウマイ話の切り出し方はなかったわけ。

いいや、ぜったいにあった。


だけど、こんな顔をされて、クドクドなんてしていられない。


「単刀直入ですね」


くすくすと笑う。

質問に答える前にこういうクッション言葉みたいなのを使うあたりも、本当に、よく似ているね。


「結婚は、彼が望んだことだったので」


彼女は、拍子抜けするほど簡単に、質問に答えてくれた。

心臓がどくんと大きく脈打つ。


その“彼”というのは、旦那さんでも、お父さまでもなく、
皆川俊明のことだと、すぐにわかる。


「彼と、彼の家族のこと、ご存じですか?」


18歳のとき家を飛び出し、縁を切ったという話なら知っている。

うなずくと、衣美梨さんはぽつぽつとしゃべり始めた。

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