パーフェクト・インパーフェクト
心地いい車の揺れにうとうとしていたら、いつのまにか車は高速道路を降りていた。
ぜんぜん知らない景色。
看板には見たことのない土地の名前ばかりが書いてある。
ここが、彼の生まれ育った場所。
「おはよう」
きょろきょろしているわたしの前髪を、信号待ちしている彼の左手がそっと触った。
「もうちょっとで到着するよ」
「ん……おうち?」
まだ口のなかがむにゃむにゃしている。
「そう、実家」
水を飲んですっきりしているうちに走り出した車。
ちらりと、横顔を盗み見た。
大丈夫かな、と思ったの。
だけど、なんてことない、いつも通りの顔だった。
緊張も不安もなにも見えない。
なんとなく急激に自分のことが情けなく思えて、シフトレバーの上に置かれている左手に、右手を重ねた。
わたしがいるよ。
こんなことしかできなくて、ごめんね。
「ありがとう」
前を向いたまま彼が言った。
「大丈夫だよ」
そして、一瞬だけこっちをむいて、そう続けた。