パーフェクト・インパーフェクト
やがてゆるゆるとスピードを失っていく、何百キロという道のりを運んできてくれた、鉄のかたまり。
お屋敷というほどでもないけれど、やっぱりかなりの豪邸と呼ぶのに不足ない建物の前に、彼は車体をつけた。
広い駐車場は、何台か分のスペースが空いているのに、彼はそこには停めなかった。
「ここが俺の実家」
シートベルトを外しながらつぶやく。
どこか、自分自身で確かめるような響きにも聞こえる。
「わたしも、行っていいの?」
「来たくなかったらここで待っててもいいよ」
最終確認のつもりで訊ねたのに、少しだけ怖気づいてしまった気持ちが見透かされている。
わたしが不安になったらダメだ。
彼のほうがきっと、もっと、ずっと怖いはずなのに。
「っ、行く! ぜったい行く!」
あわてて助手席から降りて、インターホンの前に向かう彼の左側にならんだ。
実家のインターホンを鳴らした経験、わたしには、一度もない。
彼はいま、いったいどんな気持ちでいるんだろう?