パーフェクト・インパーフェクト
小さなボタンを彼の人差し指が押しこんだ。
すぐに、スピーカーを通して、朗らかな女性の声が聞こえてきた。
「はいはーい」
「……お久しぶりです」
一瞬だったけど、永遠にも感じられるような、果てしない沈黙。
インターホンには小さなカメラがついている。
いま、むこうから、こちらの姿ははっきりと見えているはずだ。
「……俊明?」
言葉を失ったように黙りこんでいた声が、確かめるように、彼の名をゆっくりとなぞった。
そんなに若そうには聴こえない。
声の主は、お母さまかもしれない。
「ちょっと、ちょっと待ってね」
音声だけの彼女は慌てたように言うと通話を切った。
すぐに、ドタドタと、屋内からものすごい音がした。
そうして、重々しい見た目の大きな扉は、ゆっくりと開いたのだった。
「俊明っ、……おかえりなさい」
鼻のいちばん奥がつんと痛くなる。
彼は右手の人差し指を丸めると、第二関節で鼻の頭を小さく擦って、困ったように眉を下げた。
きっと、なんと答えたらいいのか、わからないでいるのだと思う。
写真を見たときからなんとなく感じていたけど、やっぱりお母さんに似ているんだね。
特に優しげな目なんか、まったく同じ形だ。