パーフェクト・インパーフェクト
「これからお昼にそうめん湯がこうと思ってたの。よかったら食べない?」
あれよあれよというまにダイニングへ通された。
彼もお母さんの前ではたじたじだ。
なんというか、独特の時間軸があるというか、かなりマイペースな女性だな。
だけど、とても穏やかで、あたたかい雰囲気があって、彼は間違いなくこの人に育てられたのだということ、節々で痛感する。
さっきのせりふ、女の子を振り回すんじゃない、なんていうのも、彼が女の子に対してすごく優しいのは、きっとお母さんの教育の賜物なのだろうと思った。
「きょうはなにしに帰ってきたの? あなたのことだから『なんとなく』ではないでしょう」
そうめんをすすろうとしていた彼が一連の動作を止め、そっと箸を置いた。
「……いや。まさしく、なんとなく」
「そう」
お母さんが目を伏せて笑った。
そして、なにか考えるように口をつぐみ、もういちど顔を上げた。
「あのね、これからもそうやって『なんとなく』で、何度だって帰ってきていいのよ」
からんと、白い幾本もの波の上で、丸い氷が涼しげな音を立てる。
「もうそろそろいいんじゃないかしら」
重たい荷物をそっと置くように、お母さんが言った。