パーフェクト・インパーフェクト


ぐすぐす、子どものように兄の腕のなかで泣く茉里子さんと、ふいに目が合う。

彼女は数回まばたきをくり返し、それから兄の体をべりっと引っぺがすと、「ええっ!?」と声を上げた。


「なんで上月杏鈴ちゃんがウチにいるわけ!? ちょっと、お兄ちゃん!?」


これにはさすがの彼も苦笑していた。

妹さんのこのマイペースさは、きっとお母さんゆずりで間違いないな。



「―――……みっともないところをお見せして本当に申し訳ありません……」


お母さんからのメッセージを見るや否や、大学の授業をぶっ飛んで帰ってきたという茉里子さんは、恥ずかしそうに小さくなりながらそう言った。


こうして見ると、彼やお母さんとはあまり似ていない。

茉里子さんのほうはお父さん似なのかな。

きりっとした目は、とても意志が強そうに見える。


「あの、すみません、こちらこそノコノコおじゃましてしまって」

「いいえ! むしろお会いできて本当に光栄です。わたしいま、生まれてはじめて兄のこと尊敬してます」


さっきまでお兄ちゃんに抱きついて泣いていた女の子が真剣にそんなことを言うものだから、よく似た母と兄が同時に突っこんだ。


なんだかまさしく、医大生、という感じがする。

雰囲気もけっこうクールな感じだし、しゃべり方もハキハキしていて聡明だし、彼が『出来のいい妹』と言っていたのがすごく腑に落ちる。


自分のことをマリと呼んで、わんわん泣いていた姿のほうが、彼女にとってかなりイレギュラーというわけだ。

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