パーフェクト・インパーフェクト
「ていうかね、お兄ちゃんがどう思ってるか知らないけど、わたしはべつに医者になること嫌じゃないよ。お兄ちゃんよりわたしのほうが頭いいし」
これまでのことを謝った彼に、茉里子さんはあっけらかんとそう言った。
彼がずっこける。
実際にずっこけたわけではないけど、わたしには、完全にそう見えた。
「あ、そう……。それならよかった」
「うん、彼氏のこともふつうに好きだし。無理に婚約させられてるわけでもないよ。ねえ、お母さん。彼氏もウチのこと理解して継ぐ気マンマンだもんね」
そうねえ、とのんびり答えたお母さんに、彼がもうひと段階ずっこけるのが見えた。
皆川家はきっと女性のほうが強い。
まだお父さんにお会いしてないからわからないけど、なんだか絶対そうな気がする。
「だからお兄ちゃんはなにも心配しないで、これからも好きな場所で、好きな人たちと、好きなことをしてていいよ」
決して押しつけられているわけじゃないのだと、茉里子さんの目が言っていた。
強い女性の目。
きっと彼女はいいお医者さんになるだろうなと、それを見ていたら、なんだか確信した。
彼がうなずく。
「ありがとう」
とても、うれしそうな、ほっとしたような顔。
でも、それは彼女が言ってくれたせりふそのものに対してというよりも、妹の成長を喜んでいる兄としての表情という感じに見えてならなかった。