パーフェクト・インパーフェクト
次に玄関のドアが開いたのはもう夕方の時間で、残る家族はひとりしか思い浮かばなかったから、少し身構えた。
隣の彼の顔にも緊張が走る。
お母さんがすかさず立ち上がり、玄関へ向かっていく。
内容は聞こえないけど、なにか話しているようだ。
そんな、長い長い数十秒のあと、リビングのドアを開けて入ってきたお父さんは、まっすぐに彼を見てぴしゃりと一言放った。
「いまさらなにしに顔を見せたんだ?」
思わずカチンときてしまう。
彼は歩み寄ろうと思って帰ってきたんだよ。
なのに、どうしていきなり気持ちが萎えるようなことを、平気で言うわけ。
彼が椅子から立ち上がり、同じようにお父さんを見た。
喧嘩になるんじゃないかとヒヤヒヤしたけど、彼はもう18歳の少年ではなく、25歳の大人の顔をしていた。
「あのときわがままを聞いてもらったお礼と、わがままを言ったお詫びをしたくて」
「おまえのわがままを聞いた覚えはない。そもそもおまえはもう、うちの息子じゃないだろう」
そうだよね。
そんなに簡単な問題じゃない。
ごめんね、いいよ、でコロッと解決できるようなことじゃない。
深い、深い溝。
ふたりのあいだには覗くことさえ困難な底なしの谷があって、それを修復するのにはもしかしたら気の遠くなるような時間を要するのかもしれないって、めまいがした。