パーフェクト・インパーフェクト
「後戻りしてきても、ここにおまえの居場所はもうないんだぞ」
それはきっと、帰ってくるな、という意味じゃなく。
自分で決めた道を歩いて行けという、不器用すぎる、見えにくい、父親から息子へのエール。
「……はい。心してかかります」
それを聞いたお父さんは家族全員に背を向け、すぐにどこかへ消えてしまった。
挨拶するチャンスすらないどころか、呆けてしまって声も出せないわたしに、お母さんが申し訳なさそうに笑う。
「愛想のない人でごめんなさいね。あの人も器用じゃないから、混乱してるんだと思うの」
「いえ、あの……わたしのほうこそ、ご挨拶もままならず」
「そんなのいいのよ。どうせ、テンパっちゃって、なにも見えてなかったわよ。本当にごめんなさいね」
だからまた来てね、と言われて、うれしくて、うれしくて、ウッカリ泣きそうになった。
「ね、俊明。あなたもそんなに察しの悪い子じゃないと思うから、お父さんの気持ち、汲んでくれるわよね」
母に肩をポンと叩かれた彼がうなずく。
同じ顔どうしが、同じように眉を下げて微笑みあった。
「お父さん、ほんとはずっと心配してたのよ。歌番組に出るんだって言ったらこっそりテレビ録画したり、茉里子が買ってきたCDをひとりで部屋で聴いてみたり。……ずっと、寂しかったのよ。父親だもの」
「うん」
複雑そうに笑んだ表情を見上げて、はじめて、彼を父親似だと感じた。
「わかるよ。俺は、おやじによく似た息子だから」