パーフェクト・インパーフェクト


彼の若いころを少しだけ覗き見ることができた気がして、うれしくなる。

わたしにとっては最初からいままでずっと大人の男だけど、家族と過ごした幼少期があって、青春の瞬間を過ごした思春期が、彼にもたしかにあったんだ。


彼はいったいどんな高校生だったのだろう。

当時の彼と、彼の周りにいた人たちは、どんな時間をここで過ごしていたのだろう。



脇坂さんは、この楽器屋さんと、それからここに併設されているスタジオ(バンドの練習をしたりする施設だって)と、駅前にあるライブハウスを経営するオーナーさんらしい。

そんな脇坂さんは、地元のすべてのバンドマンにとってとても威厳ある存在で、それは“あまいたまごやき”にも同じだったと彼はうやうやしく言った。


大げさだと脇坂さんは鼻で笑ったけど、オーラ、風格、顔つき、ガタイ、なんだかどれをとってもうなずける要素しかないよ。

鎖骨のあたりにある鍵の形をしたタトゥーもきっと本物だ。



見た目は間違いなくコワイお兄さん。


だけどきっとすごく地元のバンドマンたちを大切にして、愛をもって育てているんだろうなって、話せば話すほどに思わされた。

家族のもとを離れた彼が、脇坂さんのところを選んで身を置いていた理由、多くを語らなくとも理解できる。

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