パーフェクト・インパーフェクト


「……杏鈴ちゃん、俺は」


もう名前を呼ばないでほしい。

泣いてしまいそうになるから。


「もうわたし、あなたのこと好きじゃないです」


大好きだよ。


「大人の男の人だって思って好きになったのに。こんな、過去のこといっこも整理できてないような、ちょー情けない人だとは思わなかった」


不器用でかわいい人なんだなって思ったよ。


「だから、別れる」


ずっといっしょにいたかった。


「……うん、わかった」


夜の静寂に彼の声が溶ける。


「こんなところまでつきあわせてごめん」


指先がわたしの髪に触れようとしたけれど、直前でそれは重力に従い、だらりと落ちていった。


「ごめん。……本当に、ありがとう」


ありがとうって、わたしも言いたい。
言わないといけない。


だけど、ダメだよ。


そんな5文字を口にしたら、勢い余って、うっかり泣いてしまう。

泣いて、大好きだよって、本当の気持ちを伝えたくなる。


ごめんね。


上手にできないから、最後に傷つけるようなことをしてしまって、ごめんね。

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