パーフェクト・インパーフェクト
✧︎*。


家に帰ってから泣いて、泣いて、泣きはらして、

あしたから本当にお仕事ができなくなるかも、
という心配は、ただの杞憂に終わった。


むしろ、なんか、超はかどる。

不思議なほど、いままで以上に、超がんばれる。


やっぱりわたしはお仕事が大好きだって、恋と男を失って実感しているのは、決して強がりなんかじゃない。



「アンちゃん、なんか気合入ってるね~」


ファインダーを覗きこみながらゲンさんが楽しそうに言った。


わたしも、楽しく答えながらいくつものポーズを決める。

シャッター音に誘われるように勝手に体が動いていく。


カメラのシャッターを切る音、
これが、やっぱりなによりも大好き。


「もうこれから毎月アンちゃんが表紙でいいんでないの」


モニターにぽちぽち写真を映しだしながら、ゲンさんがジョークみたいな、だけどとてもうれしいことを言ってくれた。


「いままでもじゅーぶん可愛かったけど、最近はそこにちょっと大人の色気がプラスされてるっていうか。20歳(はたち)になったからかね?」

「えー。はたちパワーってそんなスゴイんですか?」


わたしがピンで表紙を飾る予定の来月号は、本屋さんやコンビニ、ほかにも様々な場所にきっと置かれるはず。

彼の目にも留まるタイミングが、どこかでやって来るかもしれない。


これを見た彼が、ああ元気そうだな、仕事がんばってるんだな、なんて安心してくれたら、そんなにハッピーなことはない。


それとも“去る者追わず”な彼だから、わたしのことなんか、もう思い出しもしないかも。

自分勝手だけど、それはほんの少しだけ寂しいような気もしてしまう。


でも、彼がいま、彼のいちばん愛する人の傍にいて、わたしのことを思い出す暇すらないのなら、それはそれでとても幸福なことにも感じているんだ。

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